株式会社ニシカワ印刷

ラクスルとの提携で得た最高の成果は「企業文化の変化」でした

株式会社ニシカワ印刷

仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる

東京・東大和市の株式会社ニシカワ代表取締役社長、西川誠一さまは、私たちと5年ほど前に出会いました。ラクスルが掲げるビジョンを初めてお伝えしたとき、「ニシカワの仕組みも変えてくれたら…」と期待を感じてくださったといいます。

現在、ニシカワはオフセット輪転機による商業印刷を主軸に、ホログラム類を活用した販売促進支援、3DCG・アニメーション制作、Web制作、多角的なメディア事業を手がけます。全体の売上高は約80億円あり、そのうちラクスルのプラットフォームを通じた売上は1割ほどの規模にまで増加しています。

業務提携も枚葉印刷機の導入から始め手探りのスタートでしたが、現在は120名いる社員のうち、30名ほどがラクスルの業務を担当。印刷から発送までの一連の流れを3交替制で行っています。西川社長の予感は確かな成果となって、会社を変えていました。ラクスルとの提携の軌跡について、西川社長と生産本部の野上部長にお話を伺いました。


生産現場を変えたのは、ラクスルの前向きなマインドと合理的な改善提案でした

──初めて当社に出会った時は、どういったイメージを持たれていましたか?

西川誠一さま(以下、西川):ラクスルは印刷通販の会社としては後発ですが、コンセプトや考え方が印刷会社とは明確に異なると感じていました。「空きラインの活用」といったシェアリングの発想や、印刷受発注の仕組みを変えることに主眼を置かれていました。

今でも印刷通販は「印刷業界の敵である」と思われている方はたくさんいるかもしれません。ただ、私としては「今まで印刷屋がなぜ変われなかったのか」を問うべきだと考えます。新しい業態が生まれ、世の中に認知されてきたことを、もっと真摯に受け止めるべきだと思うのです。

最初に松本さん(当社代表取締役社長CEO)とお会いした印象は、30歳前後にも関わらず、印刷産業にとても明るい光を持たれていると感じました。業界に長くいる我々は、成熟産業で、斜陽産業、マーケットもどんどん縮小していくだろうと感じている。そんな中でも親父から会社を引き継いで、信じてついてきてくれる社員のためにも何とか頑張らねば…というマインドを持った私からすると、非常に新鮮だったのを覚えています。松本さんの言葉は前向きで新しく、「この人と一緒に何かを始めれば、ニシカワにとっても何かが生まれるのではないか」と思いました。

野上哲也さま(以下、野上):……とはいえ、現場は大変でしたね(笑)。もともと輪転機の商業用印刷がメインで、ラクスル向けの印刷をするための枚葉機もなければ、オペレーターもいません。かろうじて私がノウハウを前職で得ていたので、まずはオペレーターの育成からです。毎日のミーティングを繰り返し、安定的な稼働までは約1年かかったと記憶しています。 

──稼働初期は当社のメンバーも、週に一度は伺っていましたね。

野上:そうでしたね!業務効率化のアドバイスをいただきました。各工程の作業をビデオ録画して、動きの良いスタッフを参考にしたり、「ここで10歩かかっているから改善すれば5歩で終わる」という細かい部分まで見たり。次第にオペレーターの動作も揃ってきました。業務改善の過程では、目標値を決めてクリアすることを喜びに変えるというスパイラルを常に続けていきました。今までは広い工場で大きな輪転機を動かしてきたわけで、そういったきめ細やかさは発想になかったんです。

西川:やはり、私たちは印刷で食ってきた人間としてのプライドもあるわけです。そこへラクスルの方がストップウオッチを持ってやってきて(笑)。「トヨタ式の改善なんて言われても…」というのが本音で、現場は苦労したと思います。ただ、それらの改善提案も“must”ではありませんでした。決して無理強いさせるわけではなく、当社の事情に合わせてアドバイスいただいて。経営者にとってはありがたい機会でしたよ。固まっていたプライドを徐々に壊してもらっていたわけですから。

やはり、「人」の変化は非常に大きな成果です。設備は資金さえあれば導入できますが、オペレーションするのは、あくまで人。提携を通じて生産現場のマインドも変わり、社員も共感して付いてきてくれました。こうした「企業文化の変化」が、ラクスルとの提携によって得た一番の成果と言えるのかもしれません。

「ラクスル=営業」である。業界の変化を肌身で感じています

──当初寄せていただいたご期待に応えられ、嬉しく思います。提携初期から比べ、御社の経営において、私たちはどれくらい貢献できているのでしょうか。

西川:実は全体の売上としては、この5年ほどでは大きく変わってはいません。ただ、ラクスル経由の売上はとても伸びています。さらに提携により、「会社全体としての生産性」は圧倒的に向上しています。ラクスルの業務を始めて専門領域以外もローテーションするようになり、社員が多能工化しているためです。

野上:たしかに「基本はオペレーターだけれど断裁もできる」ような人材が育っていますね。それに伴って「全体の作業を効率化し、チームで仕事をする」という考え方も浸透してきました。今までのミーティングでは「印刷に何か問題はありますか?」と聞いても「特に問題ない」と返ってくるのが定番。印刷の担当者は、自分の持ち場だけを見ているからです。その意識が変わってくると「断裁がやりやすい印刷にしよう」といったように、前後の工程との関わりから効率化を図るようになりました。今は、わざわざ場を設けずとも現場の判断で進めてくれています。機械はボタンを一つ押せば動きますが、だからこそ人間の考え方ひとつで生産力も上がっていく。それを学べたのは、体験としても大きかったですね。

西川:提携するようになって、業界の変化も肌感覚で得ています。「従来であれば印刷会社に発注されていたような仕事が、印刷通販にこれだけシフトしているのか」と実感できますから。発注されるチラシを見てもクオリティが高くなり、クライアントが大手企業であったりと、印刷物の大きな潮流の変わり目を体験できています。

提携はニシカワの営業部門にとっても刺激になります。「ラクスル=営業」なんですよね。我々としてはコストをかけずに、仕事量を確保できているようなもの。今当社には40名の営業メンバーがいますが、「対面営業である必要性」を考えていかないといけない段階ですよね。印刷屋である我々が価値だと感じているものは、お客様にとっては実は重要ではないかもしれないということを正しく理解する必要がある。すべての印刷物が「美術本」のクオリティである必要はないわけです。用途に合わせた印刷物が適切な作り方で、品質でできるノウハウが印刷会社にはありますから、その中で我々が扱う商業印刷物の意義を考え、提案していかなきゃ。お客様は情報そのものの重要性とか訴求性とかを大事にされてるんだっていうことを理解しないといけない。ラクスルとの提携は当社にそういう新たな風を吹き込んでくれています。

覚悟と努力、工夫があれば、新しい収益源のチャンスがあります

──近日中には、私たちとのお取り組みを拡大すべく、新たに印刷機を導入されますね。

西川:5年にわたる経験からも思うのは、輪転機のように「大量に作れば儲かる」というわけではなく、ラクスルの仕事で大切なのは「いかに生産効率良く作るか」なんですね。今までのような仕事だけしていたら、きっと持てなかった視点です。消費者に対して定価(販売価格)が明示されていますから、我々はその範囲内でいかに利益を出すかに注力すべきなんです。

もし、これから新規に取り組みを開始されようと考える印刷事業者の方へ、私からお伝えできることがあるとすれば、中途半端な姿勢では絶対にうまくいかないということ。ラクスルは「空きラインの活用」を掲げており、それは今も根本にある考えかとは思いますが、この仕事を請けるには覚悟と努力、それに工夫が要ります。「稼働率を下げないためにやってみよう」という気持ちでは難しい。求められるスピードや品質も高いです。しかし、それでも成し遂げられるなら、真に新しい利益をもたらしてくれる事業になるはずです。ニシカワにとっては新事業の柱が一つできているといえます。

──我々とのお取り組みを拡大することには、不安や迷いはありませんでしたか?

西川:現在、全体の1割を占めるラクスル経由売上ですが、本当ならその割合を変えずに売上が伸びていくのが一番です。しかし、そうもいきません。印刷マーケットの状況は大きく変わらず、基本的には下り坂であることは事実です。その状況がある中で、ラクスルが2018年5月に株式上場したのは、この新しいビジネスモデルが世の中に認知された証拠なのだと考えています。それならば、我々は一緒の船に乗っていっても間違いないし、設備への追加投資もごく必然的といえます。ノウハウも貯まり、仕事量も確保していただいていますから、良い流れの延長線上でものを考えられています。

今回の追加投資は、ただ設備を入れるだけではありません。提携で蓄積したノウハウを実際の現場に持ち込み、省力化と合理化を進めた生産現場としての「スマートファクトリー」を作るという目標を掲げています。たとえば、仕上がった印刷物を自動で加工所まで運ぶといったように、人力に頼ってきた部分の機械化を推し進めるのも一つです。「仕組み化」に強いラクスルに更なるサポートをお願いしたいと思っています。

──御社の経営を更にサポートできるよう我々も進化していきます!最後にラクスルパートナーズへの参加を検討している方へのメッセージをお願いします。

西川:もし設備投資や生産現場の意識改善を行うことなく商売を続けていけるなら、そのほうがよほどありがたいですよね。でも、その確証は、もうありえません。事業承継や後継者問題、設備の老朽化もあって、減価償却したものの償却費が残っている印刷会社なんて、ほぼないでしょう。この先を考え、現状維持で良いと思える経営者は少ないはずです。

「変われない」という本音があっても、その重荷を従業員に負わせたままでは、やはりいけない。ラクスルの掲げる「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」のビジョンのように、私は「社長が変われば、会社も良くなる」と信じています。私自身が変化し、仕組みを変えることで、ニシカワも良くなりましたから。経営改革はまずは経営者のマインドから。ぜひ一緒に印刷業界に良い風を起こしていきましょう!

会社情報

会社名株式会社ニシカワ印刷
創業1976年1月
担当商品チラシ、冊子、折りパンフレット
ラクスル業務生産設備
オフセット枚葉印刷機8色UV2台、断裁機、中綴製本機、シュリンク包装機 各2台、折機1台
ラクスル業務生産体制シフト3直2交代、土日稼働