昭栄印刷株式会社
ラクスル提携を機に生産ライン工程を大改革!圧倒的な生産性向上を実現

新潟県新発田市に本社を構え、昭和34年に設立された昭栄印刷株式会社。出版や販促品を始めとした商業印刷物に加え、デジタルサイネージやWeb制作、商品や冊子のデザインなどを手がけています。中国やベトナムにも自社工場を構え、アジア圏での印刷ビジネスにも参入。社員数は約140名おり、32億円ほどの売上規模を築いています。

ラクスルのパートナーとなったのは2016年1月。現在は25名ほどの人員をラクスルの生産ラインに当てており、ラクスルのプラットフォームを通じた売上は全体の2割弱を占めるまでになりました。「印刷業界全体が厳しいなかで、ラクスル関連と海外事業は伸びています」と話すのは、同社の坂井雅之代表取締役社長です。

印刷通販に可能性を感じていた最中で、ラクスルの存在は「経営者として飛車角の一手が欲しいと思っていたタイミングだった」と振り返ります。同社の石井吉徳生産管理統括本部長と共に、ラクスルとの提携の経緯をはじめ、副次的な効果についても伺いました。


従来の倍以上の作業スピードが必要だからこそ、工程全てを見直せた

──初めて当社に出会った時は、どういったイメージを持たれていましたか?

坂井雅之さま(以下、坂井:印刷業界の常識では「印刷通販は価格の問題で参入は難しいのではないか、メリットが少ないのではないか」と思われていると思いますが、はじめにラクスルからお話をいただいたときに、むしろ私はポジティブな印象をもちました。

ラクスルの仕事はきっちりと生産性を計らないとできない仕事だと思いましたが、この感覚を取り入れられれば、従来の仕事にも相乗効果が表れるだろうという展望があったからです。将来性を考えても、そういった取り組みをしない限り、おそらくこの業界で生き残っていけない。ただ、今までの歴史があると、経営者はそこまで厳しく現場に落とすチャンスが持てないはずです。ラクスルからの打診は、まさに経営者として「飛車角の一手」だったんです。

──提携後の仕事はスムーズに走り出せたのでしょうか。

坂井:昭栄印刷では毎年「組織風土」について社員向けのアンケートを行っているのですが、他社より「チャレンジ」や「改革」が抜きんでて高いという結果があるくらいに、変化を受け入れる素養を持った社員が多いんです。それでもラクスルとの提携は大改革で、現場に受け入れられるまでに時間がかかりました。

まずは、どのくらいの時間で印刷や作業を終わり、発送しなければならないのかを、印刷料金をもとに私が計算してみました。計算した数字を印刷部門の責任者に話してみると「社長、何を言っているんですか?」と言われてしまいましたが(笑)。

石井吉徳さん(以下、石井):社長の試算では従来の倍以上のスピードが必要で、機械のもつ最高スペックで取り組まなければいけませんでした。これまで仕事と仕事の合間に余裕をもたせる時間を設けていましたが、それも全て詰めていく必要があります。単純に作業時間だけを見るだけでなくて、工程全ての見直しに迫られました。 実は私たちはドイツ製のKBA印刷機を導入しているのですが、KBAから「世界一生産性が高い印刷会社」と評されているんです。そんな昭栄印刷にとってもラクスルの仕事を受けることは大きなチャレンジでした。

坂井:その日から「ケチケチ社長」と揶揄されるくらいに(笑)、細かく変えていきました。たとえば、印刷用紙の予備枚数を100枚減らすと、年間ではどのくらい経費が浮くのかを社員にもわかってもらうように数字で説明し、予備も1枚単位にまでこだわって申請してもらいました。今までは現場に回す数字も100枚単位のようなアバウトな書き方をしていたんです。

たしかに予備用紙は金額にすれば数百円かもしれません。ただ、それも年間で積み重なれば大きな無駄が起きる。10%の利益を上げるためには、資材や時間が年間でどれくらい必要になるのか、あらためて考え直したんです。そうやって現場とコミュニケーションをとることで社員の考え方を、一つずつ全部変えていきました。例えば若手社員が「1つのジョブで合計65円削減できました!」と言ってきた際には「年間になるとこれくらいの数字になるね。こういう仕事をいくつもやっていこう」と。この積み重ねです。

石井:現在は考え方が変わってきている若手社員の伸びを実感しています。ただどうしても従来の仕事と、ラクスルの仕事を分けて考えてしまう社員もいるので、これをもっと現場に落としていきたいですね。ラクスルの業務でやっている究極の効率化の意識ですべての仕事ができれば、最終的な会社の利益はもっと伸びていくはずですから。

現場と経営が一本線でつながる意識づけを

──提携してどのような点で貴社の経営に貢献できているでしょうか?

石井:生産現場観点では二点あります。

一点目は「ラクスル以外の業務も含めて、全社生産性が向上すること」です。冒頭申し上げた通り、ラクスルの仕事は圧倒的な生産効率が求められるので、常にその機械の持つ最高スペックで取り組む必要があります。つまり仕事を続けるためには、機械を常に新品同様に維持しなければなりません。この前提があるだけで工場の意識も変わります。印刷会社の財産ともいえる印刷機を騙し騙し使うのではなく、社員が率先してメンテナンスを行うようになり、相乗効果で従来の業務効率もあがりました。

二点目は、「設備投資にチャレンジしやすくなること」です。ラクスルから常に安定した量の仕事を委託されているので、新型設備を導入した際にも稼働量が確保でき、いつ減価償却できるのかが見積もれるので投資判断がしやすいんです。今後は効率化の意味も含めて、より機械化を進めて人が関わる工程を減らしていく必要がありますが、設備投資の見通しが立てやすい安心感があるので、新しいチャレンジをしやすくなったと思います。

坂井:経営観点では受注量が増えたことは非常に良かったです。ただ、利益についてはまだ想定レベルには至っていない状況です。その改善にはある程度の光も見えてきていますが、社内の人材配置やマインドの変化についても、落としきれていない部分がまだあります。会社が一つにまとまりきれていない以上は、これを推し進めなければ、最終的な利益にはたどり着けません。

──利益率改善のために心がけられていることはありますか?

坂井:「この時間内で刷り上がれば、これだけの利益が生まれる」といったように、あるいはトラブルがあったときは「これだけの損失が出てしまう」など、すべてを社員が見られる仕組みにした上で、仕事に対しての評価や報酬を考えていくように、経営側の観点から社員の業務までを一本の線で繋げていくことです。

ラクスルと提携して、ただ「急げ、早くやれ」では社員のモチベーションが続くわけがない。サイトで販売価格も明かされている中で、しっかり計画通りに私たちが仕事を完遂できないと利益が出ないということをコミュニケーションによって理解してもらう必要があると考えています。社員が「既存の仕事の穴埋め」という中途半端な意識で取り組んでいては、まず利益は望めないでしょう。

「成長の道筋が見えない」という企業ほど検討の余地がある

──御社の経営において、これからの注力テーマは何ですか?

石井:さらなる効率化を進めることですね。自動断裁機を導入しましたが、今後は自動梱包と発送手配まで機械化していきます。重いものを扱う梱包は体への負担も大きいですから。社員の仕事も「生産」から「ライン管理」に切り替われば、仕事ができる人材の幅も広がります。「ライン管理」であれば、従来では5〜6人かかっていたところ、2〜3人であたれるようになるかもしれません。いずれにしても、人海戦術で対応していく時代ではありませんから。

坂井:世間でも「働き方改革」の話はよく出ていますが、社員が健康的に働いてきちんと休むためにも、機械化を推進して、効率化していかないといけないんです。私は定期的にヨーロッパなどの海外視察に行って、情報収集しています。「海外の印刷工場では、この工程でこんな機械が入っていて、自動化ができているんだ」ということを現場に伝え、石井中心に生産ラインの大改革を実現してくれています。効率化をすることで、ラクスルの業務も更に受けやすくなりますし、社員は休めるし。とにかくいいこと尽くしです(笑)

──本当にその通りですね!最後にラクスルパートナーズへ参加を検討している方へのメッセージをお願いします。

坂井:印刷通販をはじめ、別顧客からの仕事を8面付けして印刷する工夫も含め、「いつかこうなるであろう」ということは、印刷業の経営者であれば、みなさんわかっていたはずです。弊社でも出版向けでは同一面付けで売上を伸ばしましたし、受注プラットフォームを作ろうとしていた時期もありました。ラクスルさんは、まさに自分たちで作ろうとしていた「8面を埋めた最も効率的な印刷」を実現している。私たちの思い描いていた展望が、今まさに実現しているんです。

印刷業界は毎年目減りしています。明日や来年に印刷物が半分になるわけではないけれど確実に毎年減ってきている。そこを補わないと、会社としてはおかしくなっていくと思います。その大きな流れの中で、成長の道筋が見えないという企業さんこそ、ラクスルとの提携を検討してほしいですね。印刷通販は確実にこれからも伸びます。従来の電話や対面での営業方法を「面倒だ」と感じる若い方が発注主となっていくのですから、当然の流れです。大手企業であっても、用途に応じて印刷会社と印刷通販を使い分けている企業も出始めています。

ラクスルとの取り組みは、会社全体の仕組みを大きく変えていくきっかけになります。経営者は「やるべきこと」が一気に山積みになって忙しくなりますが、社長から考え方を変えていかないと、社員も変わっていかないですからね。

会社情報

会社名昭栄印刷株式会社
創業1959年2月
担当商品チラシ、冊子、折りパンフレット
ラクスル業務生産設備オフセット印刷機8色油性1台、断裁機、折機、中綴じ製本機、シュリンク包装機各1台
ラクスル業務生産体制シフト2直3交代、土日祝稼働